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■コロナ後、観光は新たな段階に
検査・待機含む長期滞在型プランも
安全対策で高まる沖縄の価値

ー 「テクノロジーを活用して地域の防災を支えるというベル・データの取り組みについて翁長さんは観光危機管理の専門家としてどのようにご覧になりますか。

翁長:OCVBに勤務していた時期も含めて、ITを使った事業者向けのサービスは色々と見てきましたが、地域住民に観光客も想定に含めた防災プラットフォームという視点は初めてです。防災は職種も人種も関係なく、すべての人が当事者になります。テクノロジーを生かして必要な人に情報が届けられる仕組みを作ることができれば自治体や企業、住民にとっても求められるものになると思います。

災害は広域に及ぶことが一般的です。近隣自治体の備蓄情報に加え、周辺企業が提供できる防災備品の在庫情報をプラットフォームに集約することができれば、災害発生時に素早く備蓄状況が把握でき、被災者への支援に迅速に動けるようになります。平時から地域全体で必要な情報を一元化するデジタル・プラットフォームを提供することと同時に、災害時の備えには何が必要か、「防災ISO」などの、ものさしを策定することが重要だと考えています。

ー 「新型コロナウィルスの感染拡大を背景に、自治体や企業には感染症を含む「非常時」への対応に多角的な想定が一層求められるようになります。観光地としての沖縄はどのように対応していけばいいと思いますか。

中西:新型コロナウィルスが終息したとしても、すぐに第2第3の感染症の脅威に襲われる可能性があります。感染の危険を少しでも感じるようなことがあれば観光地として成り立ちません。沖縄の場合、島嶼県なので陸路で入ってくることはできませんので、空港やクルーズ船で検疫・検査体制を徹底することが可能です。

一つのアイデアなのですが、沖縄に入ってくる観光客には健康状態を確認する前後2週間の待機期間を必須で設け、その間、豪華なリゾートホテルで過ごしてもらうこともいいと思います。陰性が確定した後に自由に沖縄を観光していただく。待機期間を含めて2ヶ月間の滞在プランとして組み込むのです。観光では、安心できるハイヤーを手配して安全な観光地を案内するのもいいでしょう。事前にアプリをダウンロードしてもらい何かあった際にはルートを追うことも可能です。そうすれば、経済を止めることなく、観光業を稼働させることができます。平時の時から感染対策を施していることをアピールすることができれば、そこにしっかりとした対価を払う観光客が世界中から集まると思います。県民も安心して受け入れることができるようになります。

翁長:素晴らしい発想ですね。外から入ってくる感染症のリスクに敏感になっている時に、検査や待機期間を逆手に取って一つの旅行形態にしてしまう、というのは考えもつきませんでした。一方で、感染拡大による観光事業者へのダメージは相当深刻で、携わっている方々からはあと数ヶ月も持たないのではないかと不安の声があります。回復が半年後、1年後となった場合、発生前と同じような受け入れ体制ができるのかが、一番の懸念となっています。復興期を見据えて、防疫体制や安全対策を含めてどう向きあてっていくべきか、今から考える必要があります。中西社長がおっしゃるように、到着後2週間は豪華なホテルで過ごすという形ができれば、状況によっては経済が動くきっかけにもなるかもしれませんね。

中西:起きてしまっている現実に対して、次につなげる手立てをどれだけ考えられるかが問われていると思います。安全対策が施された沖縄であれば、世界中から人が集まると思います。1人あたりの単価が上がるので、元通りの観光収入が1千万人分であれば、100万人分くらいで賄えるようになるかもしれません。観光に従事する県民の方々にもしっかり収入として恩恵が受けられる産業にしていく必要があると思います。

翁長:そうですね。今回の事態によって、観光産業の危機対応を見直すきっかけにしたいという観光事業者からの声もあります。誰が来ても歓迎だったところを、安全、安心を軸にこれまでとは異なる客層にアピールする取り組みができるかもしれません。「数」ではなく、「質」を重視した観光地づくりの方向性が見えてくるのではないでしょうか。

■市民守る決断、トップ次第
システム化で継続性支援
行政と民間とつなぐ役割発揮

ー 自治体、企業、市民をつなぐ「防災プラットフォーム」を広めていくには、まずは防災に関して自治体側と課題認識を共有する必要があると思います。すでにいくつかの自治体と連携が始まっているそうですが、行政に期待することはありますか。

中西:防災は、市民、国民の命を守るために本来、行政主導でやるべきものですが、現状では市民が求めるものというより、予算の範囲内で備蓄品を用意するということになりがちです。企業向けの防災に取り組んできた立場として自治体目線との違いが分かりとても勉強になります。ちょうど中間に立つ我々が企業と自治体、市民をつなぐ役割を果たせたらと思っています。

翁長:どうしても縦割りになってしまう行政機関では、危機管理の対策で全庁的に取り組むことがうまくできない面がありました。思いを持った人が翌年には異動してしまう、とても大事なことなのに受け止めてもらえないというジレンマがあります。防災を切り口に、各部署が一体となって協力できる仕組みづくりができるかどうか。沖縄では、多発する台風への対応には慣れているのですが、地震や津波への危機意識は身近なものではありません。どこか先行的に実践する自治体があれば、他の自治体にも広がりやすくなると思います。そのためにも防災、危機管理の仕組みをデジタル化、システム化することは有効ではないでしょうか。行政だけでできることには限界があります。市民目線を落とし込むためにも、企業が提供するサービスと行政の事業をリンクさせていく必要があると思います。

ー 自治体体や企業には今後、感染症を含む「非常時」への対応に多角的な想定が一層求められるようになります。沖縄からどのような働きかけをしていきますか。

中西:防災については、どの自治体も、どの首長も総論賛成ですが各論になると進めることができません。提案を受ける担当者も、なかなか自分事として受け止め、管理職を説得することが難しい類のコンテンツだと思っています。だからこそ自治体のトップの判断として、市民を守るために防災の取り組みを充実させていく決断が必要です。意識の高い市町村が先行することで、連携体制やインバウンド対応などの効果を理解してもらい、他地域に広げられる可能性があると思います。沖縄でファースト・ペンギンになる自治体が出てくると、インバウンドへの対応のアピールも含めて効果が出やすい。とても大きなインパクトがあると思います。自治体や企業の担当者にプラットフォームの使い勝手の良さに触れていただいて、利便性を感じてもらえる機会を提供していきたいと思います。

(了)