防災✖テクノロジーで新時代の備えを 必要な人に行き渡る「備蓄食」 平時から機能する災害対策とは(1)

企業が抱えるビジネスの課題にテクノロジーの力で解決策を提案するベル・データ株式会社の持ち株会社であるBELL・ホールディングス(東京都)が、地域の防災・備蓄管理の“プラットフォーマー“を目指して、自治体と企業、市民を相互につなぐ新システムの構築事業に力を注いでいる。創業から30年の節目。感染症との闘いを契機に、あらゆる経済活動が「デジタル化」をエンジンにした新たな転換を迫られる中、同社の中西洋彰社長は「三方よしな世界をデジタル・プラットフフォームで作り上げていく」とその先を見据える。防災システムの実証の場として沖縄に注目する中西社長に、沖縄で観光危機管理を専門に活動する株式会社サンダーバードの翁長由佳社長を交え、感染症の危機に直面する現状と、社会インフラとしての防災、危機管理体制のあり方について聞いた。

 

モデレーター:平良尚也・Polestar Okinawa Gateway顧問/編集:座安あきの・同編集ディレクター

■規制緩和でデジタル化加速
既存システム、改革の契機に
アウトプット重視の働き方へ

ー 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大で企業活動、働き方が大きく変わってきました。ベル・データの事業はどのような状況ですか。

中西:お取引させていただいているお客様やパートナー企業様の中には、サプライチェーンが止まってしまい、事業継続に少なからず影響が出ているケースも散見され、苦しい状況が見えてきています。当社は業務委託社員を含め約300人の全社員を、基本は在宅勤務に切り替え、事業を継続しています。もともと、東京オリンピックに向けて在宅勤務の準備を進めてきたことと、ITを生業にしているためITを使ったコミュニケーションツールの活用などに違和感はありませんが、お客様は必ずしもそうではありません。「アフターコロナ」はまだ先で、長い目でコロナと付き合っていくしかないと考えています。お客様にも、ITを活用した事業継続の方法について提案を強化していきたいと思っています。

ー デジタル化を進めると言っても、実際に移行するあたって、様々な課題も見えてきたのではないでしょうか。

中西:デジタル化の代表的な取り組みとして、テレワークとペーパレス化があると思います。これまで特にフェイスtoフェイスのコミュニケーションが重視されてきた分野においても、デジタルによるコミュニケーション環境を手段として整備していくことが問われています。今回の感染症の調査において、アンケートやシミュレーションなどでデジタルの活用が進みました。補助金の給付申請や医療分野のオンライン診療などもできるようになり、規制が取り払われることでデジタル化が促進される事例を見ることができました。

ー IT業界に長年携わる立場として、長い間解決されなかったことが今回のような事態になってようやく実現できるようになったことをどう見ていますか。

中西:医療の分野だけでなく、民間企業においてもデジタル化の障壁となっているものの一つにハンコがあります。民間対民間は問題ないのに、官公庁は一向に認められません。感染予防の状況下においても、ハンコ決裁のために3密のど真ん中を出勤せざるを得ないという状況が起きています。日本の社会にはまだまだ既存のやり方を変えられない文化が残っており、変えていくにも多くの問題があると思います。ここを改革できなければ、終息後、希望ある時代はつくっていけないのではないかと思っています。

移動自粛のため福岡にいる家族と離れ、自身は東京に留まり在宅勤務を続ける中西社長。朝晩スマートスピーカーで双方をつなぎ、家族と会話や食事を楽しんでいる。

ー テクノロジーの支援によって個人個人の生き方、働き方が変わっていく転機にもなっています。これまでとは異なる価値観が生まれてくるのでしょうか。
中西:日本は戦後、製造業を中心に国民が一体となって経済復興に力を注いできたため、『時間を提供する』という働き方が主流でした。今回のリモートワークへの転換を機にオンラインにつながる働き方の選択肢が増えれば、決められた勤務時間に対しての対価ではなく、よりアウトプットが重視されるようになると思います。アウトプットがあれば、家事や育児と仕事の境はあまり感じられなくなるでしょう。このような働き方はこれから一層加速していくものと思います。
ー 翁長さんは沖縄県の外郭団体である沖縄観光コンベンションビューローを退職し、昨年6月に、沖縄では初めての「観光危機管理」の専門家として独立されました。現在、感染症によってまさに危機にあると思いますが、業界はどのような状況でしょうか。

翁長:沖縄県は3.11の大震災をきっかけに、観光産業に大きな影響を与える自然災害や感染症、大規模事故などを想定した「観光危機管理」計画の策定に取り組みました。私はその一環でフロリダ大学観光危機管理の専門家による指導者養成研修を修了し、そこで学んだことなどを沖縄観光の現場で生かしたいとの思いで独立しました。市町村や企業に対し、発生しうる様々なクライシスを想定した行動指針づくりや指導者の育成などに取り組んでいます。

起業と同時に沖縄観光は、韓国との政治摩擦、首里城の火災、年明けの豚コレラの発生、そして新型コロナウィルス感染拡大と危機が続き、事業者や自治体からは事前準備以上に、今なすべきことへのアドバイスを求められています。

新型コロナによる観光産業への大きな影響を受け、業界で観光危機管理体制に改めて関心が高まる中、新聞やラジオで見解を求められる機会が増えている。

米同時多発テロやSARSなど沖縄観光はこれまでにも周辺諸国・地域の情勢によって大きなダメージを受けてきましたが、事態が収束すれば、また需要が戻ってきました。しかし、今回の新型コロナウィルスは長期化する見通しと、世界的な感染拡大で誘客のリスク分散が機能しないという従来にはないケースとなります。

自然災害などを前提にした防災の観点では「感染症」は災害には含まれないのですが、災害時には避難所で感染症対策をしているので、必ずしも切り離すべきではなく、災害と捉えて広くその知見や対処を活用するべきだと思います。感染症を「災害」に位置付けることで、命を守る法的義務の意味合いがより強くなります。