COMPASSコラム テクノロジーを活用した沖縄型ビジネスの提案

平良尚也

株式会社Polestar Okinawa Gateway顧問

沖縄経済の課題に対し、テクノロジーの進化はどのように貢献し、どんな未来を見せてくれるのか。沖縄が取り組むべき4つの構想を紹介する。

1.キャッシュレス×行財政改革

2.監査機能の提供サービス

3.デジタル地域通貨「琉球コイン」発行

4.宮古・石垣の物流拠点化とTech管理

1. 徹底したキャッシュレスによる行財政改革推進の提案

人口減少、少子高齢化が進む中、「地方分権」を担う基礎自治体にふさわしい運営規模や財政基盤のあり方が問われている。国際競争力を高める観点からも、地方分権は、複数の周辺自治体による広域連携、政令指定都市化を検討し、規模拡大とそれによる人員・予算の効率化を目指すべきものと考える。

その最大の鍵となるのが「キャッシュレス」である。スウェーデンや中国、韓国など政府主導で現金取扱を縮小させたキャッシュレス先進国は、硬貨発行、流通、管理にかかる社会経済的なコストへの問題意識に対応してきた。キャッシュレスは、未回収金リスク回避や盗難、紛失、時にテロの回避といった抑止力や行財政改革に留まらず、テクノロジーが進化する時代の与信のあり方、分配、循環のあり方まで及び、政治改革にも通ずる大いなるソリューションになり得る。同時に、キャッシュレスは帳票類の徹底した電子化によるペーパレス化を促進させる。島嶼県で実証効果を図りやすい沖縄から先鞭をつける意義は大きい。

一方で、与信面でクレジットカードを持てない市民へは別途対応が必要となる。スマホ決済を介して返済・支払い実績をスコアリングし、個人を与信評価する中国の芝麻信用や、グラミン銀行のマイクロクレジット(*2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス博士が創設した新しい形の銀行。その信念は『貧困のない世界を創る』というもの)などの事例がある。

それら仕組み自体の信頼性や妥当性をいかに担保するか。ブロックチェーンなどを生かした透明性ある公平なキャッシュレス決済の方策を同時並行で検討・実証していく必要がある。

キャッシュレス化を阻む「雇用対策」の課題があるが、膨大な管理業務から人々を解放し、クリエイティブな業務、地域や弱者の支えとなるコミュニティー運営、教育、生涯学習の担い手、人材育成事業へとマンパワーをシフトすることの意義は、社会的要請でもある。

2.内部統制の強化と、監査機能の収益化

与信のあり方や人員配置の最適化をはかる取り組みと並行して、テクノロジーに対する「監視・監査(セキュリティー)体制」の構築が課題となる。

同時に、補助金や税金を使い社会実証を展開していく上では、委託者・受託企業双方の内部の強固な監査体制が不可欠となる。外部や市民への説明責任を果たすだけでなく、資金の使い方に透明性と公益性のチェックを入れる仕組みを構築する。

県内の情報通信産業を束ねる機関が組織の厳しい内部統制を確立した上で、公的事業を手がける自治体や民間企業に対してその監査機能を提供することも可能になる。それ自体が委託機関の活動原資となり、情報管理に対する継続的な指導力向上の源泉になり得ると考える。

3. ブロックチェーン活用による地域通貨の開発

地域の消費活動を促進する手段の一つとして「地域通貨」がある。スマートフォンなどデバイスで活用できる電子地域通貨は、住民による域内消費の活性化に加え、従来の紙やカードなどの地域通貨に比べて外国人観光客の利便性がよく、利用拡大によって外貨獲得の有効な手段になり得る。

そこで、「琉球コイン(仮称)」として、ブロックチェーン技術によるデジタル地域通貨の導入を提案する。インターネット上で、暗号通貨のほかに円やドルなどと換金でき、口座の入った携帯端末から買い物時の決済などに使える仕組みによって、沖縄独自のデジタル通貨経済圏をつくる。

取引所を設置して域外、世界中からの投資を促し地域経済の活性化を促す。主に増加を続ける外国人観光客がターゲットだが、約42万人いる「世界のウチナーンチュ」や沖縄に注目する空手家などの潜在的な需要にも期待する。外貨獲得は、農産物やエネルギー資源に乏しく輸入依存度の高い沖縄にとって、関税と為替手数料のダブルでかかるコストを抑える観点からも重要な施策になると考える。

4. 宮古、石垣の特性を生かした「新・自由関税領域」の実証

国際物流の拠点化を目指す施策は、長年にわたり沖縄振興計画の中心的な事業として推し進められたが、活用企業への税優遇策はアジア市場との競争力には及ばず、十分な効果が発揮されていないことは周知の通りだ。

シンガポールや香港などと競争できる貿易拠点にするためには、沖縄全域または一地区を新たな自由関税領域におくことである。特区などの制度拡充を求めた上で、外国製品に対して関税法の適用を除外。その管理や監視、その運用には5GによるITを最大限駆使し、ブロックチェーンなどの台帳やAIを活用したパターン認識などの機械学習で、税金の立て替えなどの決済はすべてキャッシュレス化するなどの実証を始めることができる。

その実証を展開する特定の地域として、宮古島や石垣島を提案する。とりわけ宮古島においては5万人の定住者に加え、2つの空港があり、旅客と貨物の機能分担が可能だ。これまでの物流事業の課題は、外から入ってくる貨物量に対して、沖縄から輸出できる貨物量が極端に少ない片荷輸送を解消できないことにあった。

もし、関税適用外を魅力に台湾や中国などアジア地域から外国製品が一旦宮古/石垣に集積するようになれば、本島や日本本土に向け十分な量の貨物を輸送することができるようになる。同時に、島や県全体のストックヤード機能として、災害時の防災備蓄拠点としての活用も検討できる。

日本が世界から強く求められている現行制度の規制緩和を実現できれば、国民を豊かにする経済の実現と合わせ、沖縄独自の産業振興のシステムを構築できると考える。

この新たな取引制度を見据える観点からも、前述のデジタル地域通貨「琉球コイン」を通して得た外貨は、その送金の速度や、手数料コストを大幅に抑制した直接取引の原資になり得る。為替レートと物価の乖離による内外価格差を是正することで、競争力のある産業の誘致につなげられると考える。

さらに、将来的に貨物の輸送を国内船舶に限定する「カボタージュ規制」の緩和などが進めば、沖縄からのビジネスが本土、台湾、香港など周辺諸国・地域に逆拡大し、沖縄を拠点とする市場や企業数は急増、合わせて高度なサービス経済や都市型産業が生まれてくることは想像に難くない。

◇   ◇   ◇

おわりに

沖縄は単なる47分の1ではない、アジアの中の立ち位置に優位性があることは疑いない。我が国の人口の推移からみても、自立ある地方の確立は待ったなしの喫緊の課題である。アジアに開かれた沖縄ならではの先進性とスピード感ある試みは、国内外の社会課題の解決を模索するにとどまらず、国際競争力を高め、優秀な人材の集積や居住する人々の暮らしの向上につながるものと確信する。

(株)Polestar Okinawa Gateway 顧問 平良 尚也
(株)Polestar Okinawa Gateway 顧問 平良 尚也